【世界文学】シェイクスピアの四大悲劇「マクベス」〜最終話〜

 

 

「森が動いてるってことか?」
「マクダフなのでございます」
「くっそがぁー!」
「森が動いてやがる、くっそーあの魔女どもー!」
ウウウゥゥゥ
「マクベス」 ブウゥワッ
「マクダフには気をつけろよ」
「あの戴冠式に現れなかったマクダフ
マクダフが何なんだ」
ブシュゥー
「おーい! 魔女たち続きは無いのか?」
「マクダフに気をつけろだけ言われても分からん」
「続きはもう少しあるかもね」
グルグルグルグル ブウゥワァー
次はですね子どもの
子どもの形に紫色の煙なんです
ブゥーン ブゥーン
「マクベス、マクベス」
「何だ、教えてくれ! 早く教えてくれ」
「恐れるなよ」
「女に産み落とされた者は」
「誰もお前には敵わないよ」
ブシュウウン
うわぁ
そうなのか、恐れないでいいのか
女から産み落とされたものは
誰も俺には敵わない。そうか……
最強じゃないか。そうだ!
マクダフに気をつけろとは言われたが俺は誰にも
誰も俺に敵わなかったら大丈夫だ
女から産み落とされた者じゃない者がいるのか?
いないよ! そうだよ、あのキリストだって
マリアから産まれたんだ、そうだ!
神でさえ俺には敵わないということだ!
そうだろう?
「魔女たち、それで終わりか?
予言はまだあるのか?」
「まだあるかもね」
ブヨルゥゥゥン
ドグゥドグゥゥン グワアアァァン
紫色の煙が出る
今度は王冠をかぶった子どもの形なんですね
ブウゥーン
「マクベス、マクベス」
「裏切り者が現れても」
「気にするな」
「裏切り者? 分かった」
「裏切り者が現れても気にするな」
「お前は滅びない」
「そうか」
「滅びない」
「森が」
「丘の上に」
「攻め上がってこない限りはな」
プシュゥー
森が丘の上に攻め上がって来ない限りは……
どういうことなんだ? どういうことなんだ?
森は動かない! 森は動かないもんだ!
何で森が! 分からない!
魔女たち、もう1個聞かせてくれ」
「もう聞くな」
「もう終わりなのか? 何なんだ」
「もう1個だけ聞かせてくれ」
「何だ」
「バンクォーの」
「バンクォーの血筋から王が出るというのは
あれは本当なのか」
「あれは合ってるのか」
ブンブンブンブン
「最後だよ」
ブオァァン
するとバンクォーが現れるんですね ブウゥン
そしてバンクォーの後ろに
ブンブンブンブンブンブン
8人の王冠をかぶった、王の形をしたものが現れる
バンクォーとその後ろに脈々と王が
「そういうことなのか」
「そういうことじゃないかい」
ブシュウゥン
「後は」
「どうなるかね」ブシュウゥン
いなくなった……. なんちゅう奴らだ
くっそー
しかし聞きたいことは聞けた
誰も俺には敵わない
そして森が動かない限り
裏切り者が出てきても滅ぼされない
大丈夫ってことか…… ふうぅ
ブン 「マクベス様」
「侍従長!?」
「なんでお前ここが分かったんだ」
「すごいなおまえ洞窟だぞ」
「洞窟?どういうことでございますか」
「うん?」
よく見るとそこは広間なんですよ
城の広間
「俺は出発したはずだが」
「何を仰っているのかわかりません、マクベス様」
「ああ、そうだ 俺は何を見ていた……
何だ、侍従長」
「よくない報告が一つ」
「何だ?」
「あのマクダフが」
「マクダフが?」
「イングランドヘ逃亡した模様です」
「何っ? 一人でか?」
「はい、家族も、家族も残して
たった一人で大急ぎで逃げたそうです」
「裏切りですよ」
「そうか…… 家族やその残党のものを見せしめに」
「皆殺しにしに行こう」
「分かりました。手筈は整えます」
マクダフの野郎…… しかしなぁ
裏切り者は気にしない
俺を倒せるものはいねえんだ
「あなた」
「ああ」
「あなた、予言を聞きに行ったんじゃなかったの」
「予言はもう聞いたよ」
「今何て言ってた? なんかマクダフさんの」
「家族を皆殺しにしに行くって言ってなかった?」
「ああそうだ。あいつは裏切ったんだ」
「これから見せしめに全員皆殺しに行く
マクダフ以外をな」
「大丈夫? そんなことして」
「大丈夫だ」
「大丈夫なの?」
「私は」
「誰にも負けないらしいからな」
こう言って行くわけですね
カッカッカッカッカッカッカッ
そして
そのマクダフのいなくなった
マクダフのもともといた居城
そこにいる家族、そして働いていたものを全てを
皆殺しにすることになりました
そして皆殺しにした後
マクベスは
居場所を移動することになります
身の危険を感じておりました
イングランドに、この
ダンカン王の第一皇子は逃げた
そしてマクダフも逃げた
きっとこのイングランド王とスコットランド王
つまり今のマクベス
スコットランドとイングランドは
仲があまり良くないわけですよ
その上でイングランド王のところにこちらに行った
こちらについて
こちらを攻めてくるはずだ、という風に考えていた
身の危険はもうすぐそこに迫っている
その時
妻の希望で、あの奥さんですね
どうしてもあの城に移りたいと妻が言い出した
その城は確かに守りやすい
よし、あの城に居を構えることにしよう
そうして城を移したのが私マクベスだ
するとですねその窓から
向こうのほうに森が見えるんですね
「忌まわしい森だな…… あれが」
「動く…… あっはっは」
「動かない限りは私は無敵だ」
そう言っていたわけですよ
そう言ってる間にですね
じわじわとなぜか
妻の様子がおかしくなっていくんですね
ずーっと手を洗っている
「あなた」
「どうした、今日も手を洗っているじゃないか
お前どうしたんだ」
「こっちの城に来てから、様子がおかしいぞお前」
「あなた」
「落ちないのよ」
「血が落ちないのよ」
「お前、おかしくなってるよ」
「バンクォーは」
「戻ってこないわよね」
「戻ってこない」
「寝た方がいい、お前も」
「おい医者」
「はい」
「何とかならないのか」
「そうですね だいぶと精神を
蝕まれている様でございますから」
「精神の病というのは
なかなか難しいものでございまして」
「薬を飲めばすぐに治るというものでも
ございません。しかし……」
「あれはだいぶと厳しい状態かもしれません」
「何とかしてくれ、頼む」
「かしこまりました」
言ってはですねー
そんな日が続いた。すると
ドンドンドン
「はい」
ブン「侍従長です」
「お前の効果音は分かりやすい」
「はい」
「それどころではありません。悪い知らせです」
「お前は悪い知らせばかりだ最近
なんだ教えてみろ」
「イングランド軍が」
「森にに入ったとのことです」
「そしてそのイングランド軍には」
「第一王子とマクダフもいるとのこと」
「あいつら読み通り来やがったな」
「だが俺は負けないんだよ、侍従長」
「なぜですか」
「予言についてお前に言ってなかったなぁ」
「この際だから教えてやるよ」
「はい」
「お前魔女を信じるか?」
「魔女?」
「いやいや、私は見たことがありませんので」
「魔女の予言というものがあるんだよ
魔女は言ったんだよ、最初俺に」
「コーダー領の領主になるってな
そしたら俺はどうだ? なった。そうだよな」
「そしていずれ王になるとも言ったんだ
そしたらどうなった? なった。そうなんだ」
「その魔女が言ったんだよ」
「予言があるんだ」
「森、森だ。な、森が動かない限りは」
「俺は誰にも滅ぼせない。裏切り者が出ても気にすることはない」
「こういう予言だ。どうだ?」
「ああ、なるほど その通りだと思います」
「陛下は滅びない。それは私も信じております」
その時ですね、ドンドンドン
また知らせが来るんですね
医者です。老人の医者ですね、老いた医者が
「陛下、陛下」
「悪い知らせがございます」
「お前もか? 何だ」
「実は先ほど奥方様が」
「妻が」
「精神を錯乱し、お亡くなりになりました」
「そうか」
「何でだ」
「あいつを支えに、ここまで頑張ってきたのに」
「分かった。お前はよく頑張ってくれた。いいだろう」
ドンドンドン ドンドンドン
「またか! 何だ?」
「騎兵隊長です」
「騎兵隊長、何だ」
「悪い知らせがございます」
「お前もか!」
「何なんだ! 悪い知らせ悪い知らせ悪い知らせ
お前の悪い知らせを言ってみろ」
「森が」
「森がどうしたんだ」
バッと見るとですね
森がザワザワザワザワ
ザワザワザワザワ
「何だ?」
「今日は風が強いのか?
森が動いてるように見えるぞ」
「森が動いてるように見えるぞ」
「侍従長」
「はい」
「風は強いのか?」
「いえ、すぐ近くの木の葉っぱは
一ミリも揺れておりません」
「どういうことだ? 森に何かあったのか?
騎兵隊長何なんだ? 言え」
「実は」
「イングランド軍が森に入った後、今」
「全身に木の枝と葉っぱをくくりつけ」
「森に偽装しながら進んでるとの事です」
「森が動いてるってことか?」
「何ですかそれは」
「そういう偽装しながら森の中を
進んでいるということでございます」
「どのようにしましょうか」
「うん大丈夫だ。うろたえるな」
「私はうろたえておりません」
「うろたえるなよ…… なあ
森が動こうが…… なあ」
「関係ないんだよ。妻が死のうが森が動こうが」
「いいか、侍従長お前に言っておく」
「もう一つの最後の予言があるんだ
大丈夫だ、俺は大丈夫だ」
「大丈夫、森が動いても大丈夫」
「どうしたんですか
最後の予言って何なんですか」
「最後の予言を教えてやるよ」
「そうだ、これが一番強力な予言なんだ
そう、これさえあれば大丈夫だ」
「女から産み落とされたものは誰も」
「マクベスを倒せない、これだ」
「女から産まれない
産まれないやつがいるか?」
「女から産まれないやつがいるかよ
なあ、そうだろう」
そしたらですね
老いた医者がですねちょっと震えながら
首を傾げるんですよ
「んーっ?」
「んーっ?」ってね
「おい」
「おい」
この医者はですね
ダンカン王の頃からこの国に仕えている
古い医者なんですよ
それがプルプル震えてるんすよ
プルプルプルプルプルプル
「ふうぅぅん、、、」
「なんだお前震えすぎだろ。
どうしたんだ、言ってみろ」
「いま何とおっしゃいました?」
「女から、俺一字一句忘れないんだ
そういうところは覚えてるんだ」
「女から産み落とされたものは」
「誰もマクベスを倒せない
これだ これだよ」
「一字一句違えてないぞ」
「どうした、これがどうした」
「産み落とされた者ですか……」
「何か気になるのか」
「いいえね、実はかつて」
「ダンカン王 が若き頃に」
「出産をお手伝いしたことがあるのでございます
「ダンカン王に呼ばれて予定よりも早く」
「出産が来たので、急遽お前にも
手伝って欲しい、と言われて」
「私が駆けつけたのでございます。するとまだ」
「出産の時期を、だいぶ後に予定していた妊婦が」
「もう産みそうだ産みそうだということで
大騒ぎしていたのでございます」
「そこから、そのまま出す
ということが叶わずにですね」
「いわゆる、帝王切開をしたのでございます」
「その妊婦を帝王切開し」
「腹を切り、産んだのでございます」
「その場合、医学的に」
「産み落としたとはあまり言わないのでございます」
「腹を開いて出てきた、という風に言っても
産み落とした、というのは」
「通常医学では、自然分娩のことをいうので」
「産み落とされてない者もいるかと」
「おい、おい」
「その帝王切開とやらをして産んだ奴は
誰なんだ、教えろ!」
「ですからそれが」
「マクダフなのでございます」
「くっそがぁー!」
「森が動いてやがる、くっそーあの魔女どもー!」
「陛下、落ち着いてください
いかがいたしましょうか」
「まだ森は進軍してきます
兵に、兵にどうかご指示を、ご指示を下さい」
「分かった、そうだな」
「火の矢を放て」
「そのなんか確かに多勢に無勢だが
我が軍の精鋭をを率いて」
「中央突破だ」
「だが…… そうだな…… 」
「そうだなぁ」
「戦いたくないというものは」
「いるのなら城に残していい」
「どういうことですか」
「おそらく我が軍は」
「滅ぼされるということだよ」
「陛下」
「そうとは限りませんから」
「そうと限るんだよ」
「そうなってきたんだ」
「そういう風になってきたから」
「お前も逃げたきゃ逃げりゃいい」
「逃げるわけないじゃないですか」
「そうだ…… おい、医者よ」
「はい、何でしょう」
「伝言をしてくれないか? 伝言を」
「誰にですか」
「向こうのイングランドの軍にですか」「いいや」
「王子ですか」
「いいや」
「マクダフですか」
「いいや」
「バンクォーの息子に…… 」
「どこかで生きている、おそらくイングランドに
合流しているバンクォーの息子に、伝言してくれ」
「お前は殺されない。なぜなら
マクダフを取り出した恩人の医者だからだ」
「お前は絶対に殺されない
何も悪いことをしてないからな」
「俺は、滅ぼして、必ず殺される」
「伝言がある」
「バンクォーには」
「申し訳なかったと思ってんだ」
「バンクォーの息子に言ってくれ」
「もう一つ、予言を聞いてるってなぁ」
「なんでございますか」
「バンクォーの血脈から」
「王が出るらしい」
「そうでございますかぁ」
「バンクォーの息子さんも」
「さぞ喜ぶと思います」
「違うんだよ」
「違うんだよ」
「バンクォーの息子におめでとう
っていう予言じゃあない」
「どういうことですか」
「魔女の予言ってのは面白いんだよ
表があって裏がある」
「いい予言は悪い予言でもあるっつーことだ」
「いいか」
「森が動かない。だが森は動いた
そうだろ」
「女から産み落とされた者は」
「だが、産み落とされてない者がいる
そういうことだ」
「面白い。叶うがが叶わない
良いが悪い、そういうことなんだよ」
「だからこの予言には裏がある」
「どういうことでございますか」
「バンクォーの『血脈』からを王が出る
って言ってんだ」
「決してこのバンクォーの『息子』から
とは言ってないんだよ」
「そういうことだろ。血脈っていうのは
どこを言うんだ? どこの事を言うんだ?」
「その息子の子どもか? その子どもか?」
「バンクォーの息子が生きてる間か?
そうとも限らない。10代後かも20代後かもしれない」
「薄く薄く薄く、その血がなっても
それを血脈と言うなら」
「魔女の言い方で言えば、血脈なんだろうよ」
「だから…… だから……」
「だからなんでございますか」
「だから言ってほしいんだよ」
「俺の親友の息子に伝えてほしいんだよ」
「お前は」
「野心に飲み込まれずに」
「思うように生きろってな」
「それだけ伝えてくれりゃいい」
「かしこまりました」
「侍従長」
「はっ」
「出陣の準備は整ってるか」
「整っております」
「じゃあ、行ってくる」
その時、窓の外を見た
森は確かに……
動いていた……
『マクベス』閉幕でございます
ということでございます
いやーありがとうございます
ありがとうございます
いかがでしたでございましょうか
なかなかの緊張感のあるお話だったんじゃ
ないかなと僕は思いますね
もう一気に見てしまいました
いやーそういうことなのかと
ねぇ、もちろんですね今回の
ストーリーはこちらをもとにしておりますので
実際の方のですね、戯曲の方には
もっと多くの人物が出てくるでしょうし
省かれてるところもございます
実際の戯曲ではですね
この後実際に戦うんです、マクベスと
マクベスとマクダフがね
そしてしっかり敗れてですね
新しい王が、こちらを中心に
成立したというところも描いてるんですが
この本が僕が素晴らしいなと思うのが
出陣で終わるところですよ
なんだかいいじゃないですか
「行ってくるぜ」って「森が動いてら」
ってここがいいんですよ
むちゃくちゃいいんすよ
俺がやった直後ですけども
ねー、良かったでしょ
面白かったでしょう、ねぇー
そして何か訴えかけるものがあるじゃないですか
最後のメッセージにね
もちろんいろんなお芝居がありますから
いろんな演出もありますし
メッセージもいろいろとあると思います
僕の解釈を交えたところもありますので
ぜひ本当のマクベス、読んでみて頂きたいし
実際に色々な芝居見ていただきたい
あなたの中のマクベスを見つけていただきたい
そのためのきっかけの授業になれば
嬉しいなぁと思ってるわけなんですよ
ねー、面白かったですね
しかもですね、この本面白いのね
エピローグついているんですよ
そのエピローグの終わりとともに、今日は
ちょっと終わりたいなと思っております
エピローグがあるんですねぇ
その「行ってくるぜ」って言った後にですね
また荒野なんですよ、最後のシーンが
最初のシーンと同じ荒野
ゴロゴロゴロゴロ ピシャ―
ゴロゴロ ピシャー
雷鳴響く荒野ですね
やはり3人の魔女が踊ってるんですね
「あーっはっはっはっは」
「次にみんなで会うのはいつだろうね」
最初と同じ台詞ですよね
「みんなで会うのは」
「そうだね、あれやこれやがをおさまって
戦に負けて勝った頃」
「じゃあもうすぐじゃないかい」
ヒュー
「じゃあもうすぐだ」
「また、今度は」
「どうだろうねぇ」
「どうだろうねぇ」
「あの者に会おう」
「あの者に会おう」
「そう、あの者の名は」
ピシャゴロゴロゴロゴロ
ここでナレーションに切り替わります
「雷鳴のせいで最後の名前が聞こえませんでしたか」
こうなるわけですよ
「いろんな時代にいろんなことがあるものです
人間がいる限りは」
「その業の深さも繰り返すと聞いております
雷鳴のせいで名前が聞けなかったのは申し訳ない」
「えっ?」
「あなたの名前を呼んでいるように聞こえたって?」
「それはご用心を」
という締め方なんでございます
ではまた

この記事を書いた人